はせこうブログ

読んだ本、日常の体験から考えた内容を纏めていくブログです。宜しくお願いします。

読書日記〜受刑者の出版について〜

「絶歌」への意見に対する考察〜受刑者の出版について〜

 

2015年6月11日、神戸連続児童殺傷事件の犯人である「元少年A」本人による著作「絶歌」が販売された。元少年A本人が事件から十数年経った今、当時の事件を振り返った内容の本を出版するということで世間の関心が強く、事件当時幼かった僕は、事件の内容を良く知らなかったが、読んでみようと思った。発売から暫く経った後、偶然本屋で絶歌を発見したので、購入しようと思い本を手に取ったところ、一緒にいた友人に「あ、その本買っちゃう人!?」と言われたのが、心に残った。友人曰く、元少年Aにせよ、出版元の太田出版にせよ、「元少年A」と名前を出すだけで一定の金儲けが見込め、それを購入することは事件をネタにした少年Aの金儲けに協力しているようなものという主張である。

 

友人の主張は世間一般でもある程度プレゼンスがある意見のようだ。僕は本当に伝えたいメッセージがあるのか、単なる金儲けかは、中身を読まなければ分からないと思い、購入・了読した。正直な感想として、少年Aが本書を書いた目的、メッセージはよく分からず、今となっては本当に金儲けがしたいだけだったかと思う。しかし、読む前に「受刑者が書いたものだから」という理由で本自体を否定するのは間違っていると今でも思う。出版に限らず、「犯罪者/受刑者だから」という理由でその人自身、またその人の行いを否定するのは全般的に間違っていると思う。

 

過去に犯罪を犯した経験のある筆者の本という意味では以下2冊を読んだことがある。

・ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく 著:堀江貴文

リクルート事件江副浩正の真実 著:江副浩正

どちらも事件発覚から逮捕・刑務所に入るまでの経緯について記載があるが、前者は基本的には少年時代から現在に至るまでの堀江氏の半生を振り返り、その体験から現在の堀江氏の信念・考え方がどう生まれたかについて述べられている。

 

後者はもっと事件そのものにフォーカスされており、リクルート事件が発生してから留置所での生活や取り調べの様子が事細かに記載されている。人が書いた本はどうしたって筆者のバイアスがかかるので、記載内容をそのまま信じるのは危険だが、それを考慮しても警察の取り調べの巧みさ、容疑者に自白を迫るシステムの秀逸さはすごいと感じさせる。「供述を拒むと長時間に亘って壁の目の前に立たせられる」というのは実際やられたらかなりのストレスだろう。

 

何が言いたいかというと、受刑者が本を出すことには上記の点からも意義深いことであり、加えて言えば、刑期を全うし、更生して(少なくともしたはずとして)社会に復帰した人に対し、過去の過ちをあげつらって避難するのは絶対に間違っているということである。よく「日本は一度失敗するとやり直しが効きにくい」と言われるが、友人の発言からもその雰囲気の端緒を感じた気がしたのでここに記録を残す。

 

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく

 

 

 

リクルート事件・江副浩正の真実

リクルート事件・江副浩正の真実

 

 

 

※しかしながら、「絶歌」に関しては、筆者は元少年Aという当時報道に使用された呼称で出版しており、成人したにもかかわらず本名を明らかにしていない。この点で本名を明らかにし、そのデメリットを負ってでも何か発信したいメッセージがあるならともかく、元少年Aという肩書きのまま本名を明かさないくせに、今更本の出版をするのはおかしい、という指摘は尤もだと考える。